【記者魂20】欧州問題だけが理由なのか?

ほぼ経済畑で過ごした記者時代は、東京証券取引所の記者クラブである兜倶楽部のキャップを務める一方、株式グループをチームリーダーとして率いたこともあったので、株式マーケットを今でも“元プロ”としての視点で観察している。最近では夕刊フジの企画に参加、5月は毎週火曜日発売の紙面に簡単な原稿を執筆している関係上、日中の空いた時間はマーケットを見る毎日だ。

大型連休明けからの株式市場の下げがきつい。4月も地合いが良かったとは言えなかったが、それでも何とか“底割れ”をせずに持ち堪えていた印象だった。暗転したのは、連休前後のフランス大統領選挙とギリシャの総選挙で与党が敗北してから。サルコジ落選で独仏協調の支援に疑問符が付くようになったほか、ギリシャについては国民が緊縮財政にNOを突きつけた格好となったことで同国のユーロ離脱懸念が現実味を帯び、欧州問題の不透明感から世界的にリスク回避の動きが活発化したのが株価下落の背景にある。

確かに、下落相場を決定づけたのは、それを境に下げスピードが加速したことから、欧州問題が大きいと言えよう。東京市場のメインプレーヤーである海外機関投資家が、ポートフォリオから世界的に株をはずすとなれば、日本株はひとたまりもない。しかし、下げの理由は欧州問題だけなのだろうか?

日銀が追加緩和策を見送り、さらに売りを誘う展開となったことも、欧州危機への対応と考えれば間接的には欧州問題の一環なのだろうが、そのほかに、デフレギャップにあえぐ日本の構造的な問題と、増税に対する不透明感の高まりも下げの背景にあると筆者は考えている。構造的な問題は、バブル崩壊以降の約20年変わらず、改めて地合いを悪化させた…ということにならないものの、消費税率引き上げという増税に関しては新たな悪材料として加わったとみることも可能だ。

戦後この方、東証が1949年に再開して以降、増税局面で株価は上昇した試しがない。代表的なのは、1996年6月、時の宰相である橋本首相が消費税率を3%から5%に引き上げると初めて表明した際のこと。実は、その前日が日経平均がバブル後最高値22666円を付けたのだった。そこからの下げは消費税率引き上げを先取りした格好となったのだが、以来、株式市場でその高値を超えられない…というのが事実なのである。

リーマンショックがそうだったように、欧州問題を対岸の火事と見てはいけないが、現時点で内需型の好業績銘柄が叩き売られるのをみるにつけ、消費税率引き上げを織り込み出しているようにみえてならない。もちろん、リスク回避の動きから売りが止まらない(或いは売り仕掛けが活発化)というのもありながらも、内需系の好業績株に突っ込みを買うという動きが見られないのは、国内事情を見通してのことからではないだろうか。

過去の経験則(通じにくくなっているようだが…)からは、海外環境の悪化や円高から輸出型産業が売られても、内需系銘柄をディフェンシブストックとして拾う動きが散見されていた。だが、今の相場ではそのような動きが感じられない。となると、国内にも理由がある・・・と分析することが可能になる。そこでは、日銀の頑な姿勢も挙げられようが、消費全体に重大な影響を及ぼす消費税率の引き上げが下げの大きな理由であると思えてならない。

増税への反対論は、まず”無駄を省く”前にすることが声高に叫ばれるが、もう1つ忘れてはならないのは、デフレ下、景況感不透明な時期に、増税をやって景気がますます悪化するという懸念・・・。先を見通す株価は、そのことを読んで動いている印象が強くなっている。

夕刊フジ「株─1グランプリ」に参加、来週火曜発売分が最終回