【記者魂23】カジノはIRのワンオブゼムで・・・

県議会においてIR(統合型リゾート)議連に属しているため、カジノについて勉強をしている。これまで、昨年9月の代表質問でも取り上げた一方、ウォールストリートジャーナル日本版サイトのコラムでもカジノをテーマにして執筆した。

筆者はカジノに関して、海外観光客誘致のツールになるほか、国内経済の視点で1つの産業に育つ可能性があると考えている。ただ、それには条件があって、“依存症”対策に傾いたばかりに“つまらない”ものとなれば、結局、集客がままならず、バブル期のリゾート法で不良資産の山を築いた再来になることが危惧されるため、中途半端な議論でカジノの建設だけを急ぐのなら、止めた方がいいという立場だ。

幸い、法改正によって国内のカジノが実現した際の誘致を考えている千葉県では、カジノだけを建設するのではなく、IRの目玉となる1つの施設として設置しよう・・・という方向になってきた。海外客誘致を主眼とするのであれば、先行する地域に負けないだけのものを作らなければならない。先に、カジノの先進地域であるマカオを訪れる機会があったが、現地の様子をみるにつけ、カジノオンリーではとても勝負にならない・・・日本ではIRのワンオブゼムとしてあり方を考えないと失敗してしまうとの意を強くした。

マカオにカジノは現在、34カ所あるという。狭いために、至るところにある印象だが、現地の関係者によれば、1日あたりの“上がり”は邦貨換算で300億円規模に達するとか。マカオ経済の根幹を支えると言ってもよく、そうした状況があるがゆえに、日本国内でも解禁すれば1つの産業として有力視されているのだ。

しかし、古来、盛んに博打が行われながら、ギャンブルに対して後ろめたさを感じさせるムードが強い日本で、マカオのようにカジノを建設するのは難しいのではないか。おそらく、国内で解禁となった場合は依存症対策が議論されると想定されるし、筆者もそうあるべきと思っているが、マカオの現状をみる限り、依存症の客が多いことがカジノ隆盛の背景にあると思われ、言葉は悪いながら“カモ”がいないとカジノは儲からないのである。

現地のカジノのそばには、やたら「押」という看板が目立ち、そこでは貴金属製品や高級時計がショーウインドウに展示され、ホテル内にも「押」の字を掲げた店舗が入っている。これは実をいうと質屋・・・つまり、カジノで負けが込んだ客が、駆け込んで身に着けている装飾品を質草にしてキャッシュ化、負けを取り戻そうと勝負するのだ。かつて、パチンコが今以上に盛んだった際、大型店のそばの消費者金融が繁盛した・・・といった話があったが、それと同じとみていいだろう。

このことから、日商300億円の少なからずは、依存症かそれに近い客によって支えられているのが想像に難くない。これも現地関係者の話だが、日本で話題になった大王製紙の御曹司のような例は、少なくないとのことだが、それは当たり前のように起きているので、表立ってニュースになることはないという。そうした人がいるからこそ、マカオのカジノは繁栄しているのである。

ちなみに、300億円のうち、270億円が中国本土の客が落とす金額とか。国内でカジノを建設した場合、中国の富裕層がターゲット・・・などという声が聞かれるが、彼らにとって近くにあるマカオと同じ土俵に立って勝負になるとは思えない。カジノを建設するだけではだめなのだ。すぐに駆け込めるような「押」が近隣に・・・といった“インフラ”も整備され、勝負に熱くさせるようにしなければ、カジノ目的の客はとても満足しないだろう。風営法によって24時間営業はできません・・・などというのも論外ということになる。

以上の点からも、最近、成功したシンガポールのようなIRを建設、カジノはその1つのコンテンツにとどめ、全体として内容を充実させるように取り組む必要がある。シンガポールを視察した森田知事が「歌舞伎や能などの日本独自の芸能を加えるといいと思った」と述べたように、IRの目玉としながらも、あくまでもカジノは一部分として設置すべきもの・・・カジノの先進地域を見て思った筆者の感想だ。