【記者魂109】地方議会はプロパガンダの場ではない!

※ハフィントンポストにコラムが掲載されました。

 公の場で主張される方が少ないので、声を大にして言うことにした。地方議会は“国の政策”を宣伝する場ではないと思うのである。一部の通年議会を実施している自治体を除いて、たいていの自治体では議会が開催されるのは年4回。その限られた時間の中で行う質問は、最も重要な当該自治体の予算のほか、地元で解決する諸問題を議論すべきではないだろうか。

 名指しは控えるものの、地方議会において「憲法に関する当局の姿勢は?」「安保法案にどう対処するのか?」──といった質問をする議員が存在する。憲法や安保法案など国に関わる問題は、国会で議論すべきものであるのは言うまでもない。ところが、現実はこうした質問が後を絶たないのである。これらが都道府県や市町村でどうこうなるものであれば、このようなことは指摘しないが、地方議会で憲法改正や安保法案の制度化にわずかでも携わることは不可能なのだ。

 答弁する側も、本音ではこうした質問は止めて欲しいと思っているのではないだろうか。筆者の経験を記すと、予算委員会で相続税の問題を取り上げようとしたことがあった。今年からの控除引き下げで、支払い困難者が増えると想定されることが取り上げた理由。ところが、担当職員とのやり取りの中で「相続税は国税なので、できれば取り下げて欲しい」と言われた。

 確かに、一部が自治体に配分される消費税などと異なり、相続税は国税であるため、地方でどうこうすることはできない。私の守備範囲外なのだ。ゆえに、質問としては取り下げ、住民税などの支払いに影響を及ぼす可能性があるという点に言及し、県としてもできることがあれば対応をと要望に止めた経緯がある。私は、他の議員が担当職員とどう話を詰めているのか知らないが、国に関する質問をする議員、“強行”しているのだろうか。

 もっとも、地方議会において、国に対してモノが言えない、政策提言ができない、そういったことはない。地方自治法第99条の規定により意見書を提出することができる。地方の意見を国に届ける重要な制度だ。通告を行えば、討論を行い、主義主張を述べることができる。私も、TPPに関して意見を述べるために、何度か登壇したことがあった。制度上で、憲法や安保法制について、政策としてアピールする場が用意されているのである。

 ところが、本会議や委員会は違う。住民のための課題を議論すべき場と思うのだ。山のようにある諸課題を限られた時間で解決の糸口を見つけるところで、地方議会で解決できない問題を取り上げるのは止めて欲しい。それをアピールするという目的で確信的に取り上げているのなら、ハッキリ言う。地方議会の質問は、あなた達のプロパガンダのための場ではないのだ。そのために、住民は納税をしているのではなく、私はこれも税金の無駄遣いの一つだと思っている。

 誤解しないので欲しいが、主張を止めろと言っている訳ではなく、私は考え方は異なりながらも、相手の意見は尊重する。ただ、場をわきまえて欲しいのだ。

 主張をしたいなら、魂を込めて意見書に記し、それに対して堂々と討論をすればいい。街頭活動で訴えるものも自由。どうしても国の政策に関わりたいなら、国政選挙で当選して国会議員になって、国会の檀上で意見を述べればいいではないか。地方議員は地方議員に課せられた役目があると思うし、その最も大切な機会が議会での質問だろう。

 聞けば、現在行われている埼玉県知事選挙において、「争点は戦争法制」と訴えている勢力があるとか。冗談を言ってはいけない。埼玉県知事がどうやって、国の法案に関わることができるのか。普段、あなた達が批判する、福祉や大型の公共事業等々、生活に密着した政策があるべき争点ではないのか。

 繰り返して記す。地方議会はプロパガンダの場ではなく、地域の住民に関わる諸問題を議論する場なのだ。