【記者魂110】日経平均は19000円割れ、”夜明け前は一番暗い”

中国経済に対する不安感が高まったことを背景に、株価が”つるべ落とし”のような状況となっている。今や世界経済で重きをなす中国の経済が変調をきたせば、同国向けに輸出をしている企業の業績が悪化するのは論を待たない。そこから、世界同時株安を誘発した。

日本も当然のことながら影響が避けられない。しかも、これまで株価上昇のよりどころとなっていた為替相場が、1ドル=120円台までドル安/円高が進むなど、輸出産業の収益環境の悪化が売りを誘発する格好。日本企業が再び国際競争力を失うとの見方が広がっているのだ。

為替については、世界全体のマーケット環境が落ち着くまで、円高トレンドになる・・そんな見方も生じている。ここでのキーワードは「リスク回避」・・安全を求めて、円を買う動きが活発化しているため。それだけ、日本のファンダメンタルズはいいということの証左でありながら、このまま円高が続けば、輸出型企業の業績悪化は避けられない。先に発表された2016年3月期の第1四半期(4~6月)決算では、円安の恩恵で業績好調企業が続出、それを手がかりに日本株を買う動きもあったので、このところの円高は売りを誘うというロジックに間違いはないのである。

さらに、テクニカル的には、利益が乗るところほど、損を埋めるために、利益確定売りの対象になりやすい。円安によって、たとえばドルベースでは、円換算以上に日本株が上昇しており、世界の運用機関は他国の株式市場や、このところ下げが著しい原油ほか商品市場で損した分を埋めるために合わせ切りする対象となっているのだ。

国内では、信用取引で買った玉の手仕舞いが活発化。急激な下げによって、追い証や担保切れが続出し、売りのスパイラルが発生している。これらは、下げに拍車をかける要因となるので、週明けの株式市場は、そうした投資家たちの悲鳴が聞こえるような下げ方になった。一度、こうなると、投げが一巡するまで止まらない。

もっとも、中国経済という実態面に対する不安から下げたとは言え、先週末、そして週明けの東京株式市場の動きは、以上のようなテクニカル的な要素が強い。つまり、実態以上に売られ過ぎの感があるのだ。

たとえば、日経平均のPERをみると、本日引け値現在で、14倍台まで下落。NY市場でダウ30種が15倍台、S&P500が21倍台であることを踏まえれば、時価水準は割安感が強まったと言えよう。ちなみに、最近の下げ局面では、PER13~14倍まで下がると日経平均は反転した経験則もある。

11月に控えると言われる郵政3社の上場に絡む思惑、さらには、秋にも安倍政権が打ち出すという景気対策に対する期待──こうした材料も合わせ考えると、地合いさえ落ち着けば、急速な戻りに転じる可能性がある。中国という不安要素はありながら、金融緩和策を含めて、日本国内だけに限って言えば、投資環境は良好な状況が続いていることを忘れないでおきたい。

日経平均の日足チャートをみると、今日で”マド”空けが2日目。明日も下放れて、本日の安値を下回って”マド”を空ける格好となれば”三空叩き込み”──テクニカル的には、いったん反転が読めるようになる。

この動きだけ捉えれば、絶望的な気分になるものの、下げ相場において”夜明け前が一番暗い”のが株式市場。足元のファンダメンタルズは悪化しておらず、ここは慌てず嵐が過ぎ去るのをじっと堪える場面と言えよう。また、今回の下げは国内の環境変化ではなく、海外要因が主導していることを忘れないでおきたい。