【記者魂10】しろうと

記者魂素人(しろうと)とは、その分野に経験が乏しかったり、専門的でなかったりする人物のことを指す。職業で語れば、プロ(プロフェッショナル)に対するアマ(アマチュア)となるだろうか。反対語は玄人(くろうと)となる。

平安時代に、白粉を塗っただけで芸の無い遊芸人を「白人」と称したのが、この言葉の由来のようだ。まさに、2代続けて就任した防衛大臣は、肩書きだけが大臣の「白人」と言えるのではないだろうか。

一川前大臣のように、自らを芸の無い遊芸人であると宣言した訳ではないながら、出演したTVで早くも「素人」ぶりをさらけ出した田中大臣。普天間基地の問題のみならず、日本の国防は大丈夫かと心から思わせた。

適材適所という言葉がある。少なくとも大臣は、その分野において国の舵取りをする訳であり、それが「素人」であっては国の存亡に関わるといっても過言ではないだろう。

各国の国防大臣・長官は、戦前の日本がそうであったように、現役の軍人が就任しているケースが多い。対外的に、そうした人物と交渉する場面があるポストに「素人」が就いてどうなるか──。日本は国の防衛に甘いのではないかと思われたとしたら、それだけで一大事だろう。その点で、任命者である野田首相の罪は重い。

もちろん、国防に関しては、シビリアンコントロール(文民統制)を踏まえれば、日本において職業軍人たる「プロ」が就任することはあり得ない。しかし、「アマ」であっても国防に関する最低限の知識を備える人が就任すべきだ。

田中防衛大臣について言えば、義父の田中角栄首相についても触れる必要がある。経済記者の駆け出しの頃、大先輩の記者から、昭和40年の山一證券危機のの際、当時の田中蔵相が周辺の反対を押し切って日銀特融に踏み切り、金融の混乱を収束させた話を聞かされた。

そんなイニシアチブを取るだけの器量・・・田中大臣に備わっているだろうか。単に、元首相の娘である真紀子元外相の夫・・・そんな話題性だけだったら、日本にとって本当に不幸だ。

政治家は万能ではない。得意分野もあれば、不得意な分野もある。不得意な分野で経験を積むことは大事だが、「プロ」の頂点に立つポジションが“経験を積む”段階であってはならない。

そんな大事なポストを、順送り人事の対象とするとは。いや、防衛大臣だけとは思えない。財務大臣、外務大臣・・・大臣というものをどう考えて任命したのか。

真に国家を思って政権を運営するなら、適材適所を考えて、百歩譲って専門ではない人物を就任させたとしても、イニシアチブを十分発揮できる人物を大臣にさせるべきだろう。

自民党政権時代でも、主に“参議院枠”を中心に、派閥順送りの「素人」大臣が多かったと記憶するが、民主党政権になってからもそれは変わらず・・・。そうした状況を変えるのも政権交代の意義だったのではないか。

それどころか、「政治主導」が「素人」によって行われるという、国家にとって危険極まりない事態にした・・・民主党の罪は限りなく大きい。