【記者魂68】北総鉄道運賃問題を考える

日本一運賃が高いと言われる北総鉄道運賃・・・県と沿線6市、京成電鉄・北総鉄道両社による現行の補助金による運賃値下げスキームが、白井・印西両市長が補助金不交付を正式に発表したことで、実質的に崩壊する格好となり、平成27年度以降、運賃が元に戻る・・・利用者の立場でみると値上げとなる恐れが強くなっている。

これまで、北総鉄道に関して、みんなの党では運賃問題よりも、急行廃止問題に熱心に取り組んできた。現在、所属議員は急行通過4駅(北国分、秋山、松飛台、大町)がある市川・松戸両市選出議員しかおらず、夕方ラッシュ時に北総線の起点となる高砂駅において、普通列車への乗り継ぎの最大で20分ほどの待ち時間が生じる不便さを解消して欲しいという要望が、4駅利用者から出ているためである。

しかし、4駅利用者にとっても高過ぎる運賃の引き下げを望む声が多い。現実的に、値上げとなれば生活に影響を及ぼすため、我々も取り組まなければならない問題と認識している。

なぜ、ここで、この問題を取り上げたかというと、最近になって、「北総線の運賃値下げを実現する会」という団体から、運賃問題についてのアンケートが送られ、締め切りまでに回答したためだ。質問に対する答えは、二者択一にその他が加わったもの。二者択一で済ますような簡単な問題ではなく、すべて「その他」でその理由を記した。

同会のホームページやチラシで、回答の有無と内容を公開するとあったが、これらが的確に反映されるかどうか確証がない。相手がジャーナリストを名乗れば、その良心を信じるものの、そうした拠り所がない以上、私が回答したことを正しく伝えるために、ここに記すものである。ここでは、3つあった質問のうち、とりわけ、議論の肝となる「運賃値下げは北総鉄道の自助努力で実施すべきとお考えでしょうか?」の回答について、取り上げることにした。

選択肢は、ア)自助努力すべき、イ)補助金を継続すべき、ウ)その他(記述ください)の3つ。先述したように、私は(ウ)を選んだ。

二者択一なら、経済活動は民間の自由意思で行うべき・・・という信条から、(ア)を選択することになる。補助金は県全域で考えた場合、沿線地域外との税収配分において、北総鉄道非利用者に不公平感が生じることも、本来は支給すべき性質のものではない。例えば、アクアライン800円継続に伴う補助金に関しても同じ理論で語れるが、その経済効果から県全体の税収増が期待できるという点で、域外住民の理解を得やすいと考えられる。

ただ、私は自助努力を原理主義的にかざすことはしない。新たな施策として補助金による引き下げを検討するのならまだしも、現実的に支給され住民の利益に繋がっているものを、バサっと打ち切ることが良いことなのか、自信を持てないためである。

ここで、自助努力を北総側に求めたところで、それは現実的な対応ではないだろう。なぜなら、民間の、なかんずく上場企業が利益を左右する問題が生じた場合、株主代表訴訟を提起されるリスクを回避する行動を取ると思われるためだ。ここでは北総鉄道株式の50%を有する親会社の京成電鉄が、それに該当するのは言うまでもない。

高過ぎる・・・そう感情論に訴えても、行政が認可した運賃なのである。県議会でも答弁があったが、北総側に運賃設定の裁量権があり、監督官庁(国土交通省)が認可した運賃について、再度行政が介入するのは難しいだろう。それでも、行政に自助努力を促せよとするのであれば、国交省を経由して粘り強く交渉する性質のものと考えている。

そして、自助努力を運賃問題の源と主張する同会や白井・印西両市について問いたいのは、現状では不可能と推察できる自助努力による運賃引き下げを遂行する余り、値上げが現実となった際、どこまで責任を追うのか、また、自助努力以外の対案はあるのか・・・という点だ。スキームを壊したことで値上げとなり、その要因を「北総側が自助努力を怠っているため」とするのであれば、あまりにも無責任だろう。なぜなら、相手の親会社は上場企業。まったく可能性はゼロとまでとは言わないが、応じることはないと想定される。交渉相手の経済合理性を考慮しない議論の進め方に賛同することは難しい。

なお、アンケートには、財務諸表をつぶさに分析した公認会計士や弁護士など、プロによる調査報告書が添付されてきた。なるほど、キャッシュフローその他から、理論的に自助努力による値下げが可能というのはわかる。しかしながら、これは“経営者”に対してのアプローチであり、送られてきた資料を読む限りでは、”株主”という視点が欠落しているように思えてならない。

会社は株主のものなのである。ゆえに、利益に関わることを経営者にだけ訴えかけても、徒労に終わってしまうだろう。運賃が行政の認可を受けている以上、話の持って行き先は、親会社である京成電鉄の大株主であるファンドや、日生・三菱UFJなどの金融機関、持ち合いをしているオリエンタルランドなどであるべきなのだ。これらに、書簡でも出して理解を得ようとしたのであろうか。なお、大株主に働きかけをしているのであれば、この文言についてはご容赦願いたい。

この問題に関しては、県議会において印西市選出の滝田敏幸議員(自民党)が熱心に取り組まれている。政治信条や、この問題に対するアプローチの仕方は異なるものの、議論の進め方について疑問符がつくという点では滝田議員に賛同したい。北総、京成側の事情を十分過ぎるくらい考慮しない議論は、非現実的だと私は思っている。

誤解を招かないよう、もう一度記すが、本来、運賃問題というは自助努力で行うべきものだ。しかし、過去に十分な議論を重ねた上で補助金が投じられている現状を踏まえれば、深い議論もなくそのスキームを壊すのはどうかと思う。

議論が深まった上での補助金カットを決断・・・というのなら理解できるが、ここまでの流れからみると、私には今回の問題「はじめに結論ありき」だったような印象を持つ(直接関わった訳ではないので誤解している部分があるかもしれないが)。国交省を通じて親会社である京成電鉄、さらには同社の大株主などに働きかけることも含め、より現実的な対応策を考えるべき問題であり、暫定的に現行スキームを継続、或いは補助金額の削減など部分的な値上げなどを検討しつつ、議論を進める問題と思っている。