【記者魂112】株の運用がダメというなら代替案を出して欲しい!

2015年10月30日

※以下のコラムが、ハフィントンポストに掲載されました。

ハフィントンポストで先週末、年金の運用損失に関する記事が掲載された。それによると、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の2015年7─9月期の運用損失が約7兆9000億円に上っていることが、アナリストの試算で明らかになったとか。四半期ベースでは、リーマン・ショックの影響が大きかった2008年10─12月期の損失額約5兆7000億円を上回る見込みという。

これは、チャイナショックによる今夏以降の株価下落が背景にあるのは言うまでもない。GPIFは、厚生年金と国民年金の積立金をマーケットで運用しており、株価の上昇が顕著だった昨年は、逆に収益額が過去最高の15兆2922億円に達した経緯がある。

そして、予想通りというか、例によってというか、マーケットの不調を理由に損失が出た際に必ず出てくるのが「大切な国民のお金をリスクにさらすべきではない」という批判だ。今回も、野党関係者がそのようなコメントを寄せているのをはじめ、ネット上では同様に反対する人が大合唱!中には、それを安倍政権の失政と攻撃する向きまでいる。

だが、待って欲しい。そもそも、何でリスクを取りにGPIFは動いているのか。日本経済が右肩上がりで、人口も増加、年金の担い手である現役世代が増え続けるのであれば、筆者も長年の取材経験で株式のリスクは知り尽くしているつもりなので、無理に”大切な国民のお金”を株式で運用する必要はないと唱えるだろう。ところが、現状は甘いものではない。現役世代の先細りで、いずれ年金は立ち行かなくなる。敢えてリスクを取ってでも運用資金を増やす必要があり、そのための株式投資なのだ。

公的資金の株式運用というのは新しい話ではない。初めて議論になり、実行されたのはバブル経済期の80年代後半。それまで、年金福祉事業団(2001年に年金資金運用基金に改組、2006年に現在のGPIFに移管)をはじめ公的資金と呼ばれるものは、財投において決まった利率で運用し、安定的な収益を上げていたが、バブル期の低金利によって運用難に陥り、株式運用の必要性が議論されることになった。当時、最も積極的だったのは郵政省簡易保険局、現在のかんぽ生命で、信託銀行に自由化資金の枠内で資金を寄託、株式投資が行った経緯がある。その後、橋本政権下の日本版ビッグバンによって、年金資金の自主運用を求められることになった。民主党政権下でも運用が続けられたのは言うまでもない。

このように、必要に迫られて株式運用を始めたのである。特に、バブル崩壊後の超低金利下では、かつての財投運用のように、ローリスクで高くて有利な運用など望めるものではない。その一方で、担い手である現役世代が減少、受給者である高齢者が増加、そのまま”安全な運用”で資金を増やすことが出来なければ、立ち行かなくなってしまうだろう。ゆえに、リスクを取る必要があるのだ。

もちろん、元本が保証されている訳ではないため、マーケットが不調となれば、今回のように損失が発生する。それで”怒りが生じる”こともわからないでもないが、同時に政府が経済運営をしっかりと行い、株価が堅調に推移すれば、目論見通り資金を増やして基金の安定化に繋がるのだ。実際、2001年度からの損益をみると、2014年度までに累計で50兆7338億円の収益を確保。7─9月期の損失を合算してもまだ40兆円を超す収益がある──この事実を反対派の方も熟視して欲しい。

重要なのは、”国民の大切なお金”を株式に投資する際、同時に企業収益が向上し国が富むような成長戦略を実行することなのである。リスクはありながらも、株価が上がれば問題は生じない。そのためには、適切な経済対策を適宜行い、株価を上向くような状態にすればいいのだ。

株価を上昇させるというと、官製相場はけしからん──すぐに、こうした批判が出てくるが、大いなる勘違いと言わざるを得ない。本当の意味で官製相場を実行、バブル崩壊となったお隣の中国とはまったく事情が違う。確かに、日本でもバブル崩壊後にPKO(price keeping operation=当時の国連平和維持活動の略称PKOに喩えて株価維持活動と呼ぶようになった)といった動きもあったが、現在の株価水準は東証1部全銘柄のPERが16倍台(2016年3月期業績見通しに基づく)と、バリュー面から適切と言える状況。無理に支えなくても、下がれば自然に買いが入る株価水準なのである。

ハフィントンポストの取材に対して、民主党の山井和則衆院議員は「実態経済以上に、官製相場で株価を無理に上げてきたツケが回ってきている」と述べたと記事にあるが、客観的に示されている株価指標、そして各企業が公表する業績見通しなどを踏まえれば、どこか実態経済以上の株価であるのか。仮に、先行き日経平均が2万円の水準に回復した場合でも、来期の企業業績が5~10%増益になるだけで、株価は半年以上を先読みして動く点を踏まえれば、実態からかけ離れるとは決してならないのだ。

「株式の運用はけしからん」という人に聞いてみたい。それでは、放っておくと、立ち行かなくなる年金資金について、株式で運用せずにどう対処していくのか?是非、代替案を示して欲しい。

かつてあった財投運用のような有利かつローリスクの運用対象などどこにも存在しないのである。このまま年金資金が先細りして、「受給年齢引き上げ+受給額引き下げ」が代替案であるというのであれば、それもよし──政策担当者であれば、株式運用を止める代わりに受給を減らすと堂々と言えばいい。これは政策論争なのだ。受給額を極力現状のままにしたいという場合、株式運用などリスクテーク以外に何か方法があるなら、お聞きしたいものである。


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