【記者魂119】保育園開園断念について地元住民の”独り言”

※ハフィントンポストに以下のコラムが掲載されました。

保育園の問題が続くが、今度は住民の反対で計画していた私立の保育園の建設が断念されたことが注目された。実は、この建設予定だった保育園は私の地元である市川市、しかも、住んでいるご近所の話。反対があるとの話は聞いていたが、最初に断っておくと、私は反対運動に加わっていない。むしろ、まさか断念になったとは・・と驚いている。以下は、地元住民の1人としての”独り言”だ。

待機児童を考えれば、保育園が1つでも増えることは嬉しいニュースになるだろう。私も、自分の子どもが小さい時に待機児童に苦しんだということは前回のブログで記した通り。実際、報道にも触れられている、計画を断念した保育園の近所にある公立の保育園に希望しながら入れなかった過去もある。

ただ、この問題、地域に住む1人として住民の弁護をしたい、といった感情を一切排除して述べても、果たして「必要な保育園に建設する住民のエゴは許さない!」と言わないまでも「保育園について住民にもっと理解して欲しかった」という論調で取り上げていい問題なのか、そう感じた。

当該地域について言えば、”千葉の鎌倉”とも称される、閑静な住宅街。丁目は異なりながら、近くの地域は、公示地価で住宅地としては県内最高価格という事情から、余計に住民が反感を買っているのかもしれない。

報道の中でお年寄りのコメントに「静かな街だから住んだのに」・・というのがあるなど、”子どもがうるさい”との理由が一番大きいとされるが、ここで住民の弁護をすると、決して、子どもを邪魔扱いする街ではない。むしろ、近くにある天神様では、子どもも大人も皆溶け込んでお祭りを楽しんでいる。報道によって〝子どもに冷たい街”というイメージで語られるが、地元の子ども会は、お年寄りを中心に市内の中でも活発に運営。むしろ、子どもを大切にしている街なので、その点は誤解しないで欲しい。

“子どもがうるさい”はさておいて、もう一つの理由である”道路が狭い”は、その通りだ。現地は、建設予定地だった前の道路は、軽自動車ならと言えるような道幅。送迎する環境としては難が大きい。私自身も経験しているが、市川市民の大半は送迎に自転車を利用しており、送迎を”乗用車禁止、自転車限定”にすれば、ある程度、クリアできると思うが、それでも、現地をみた感覚では、送迎の際のトラブルが発生しない保証はないと言える。

こうした理由よりも、一番の問題は、住民に対する根回し、報じられたような説明不足が大きかったのではないかと思う。議員時代の経験でいうと、行政や事業者側の説明不足が原因で、本来なら進むべき案件が難航したケースが少なくない。県の事業である地元の橋の架け替えで、賛成派が圧倒的に多い説明会に県土関係の議員として出席したことがあるが、行政側の不作為な説明により会が紛糾。住民を納得させるのに苦労したこともあった。その説明会は、まるで反対派の集会のような雰囲気になってしまったのである。

今回の保育園について、説明会が行われたとのことであるが、私の記憶では自治会の掲示板に掲示されたほか、回覧板でお知らせが回ったという記憶はない。聞けば、いきなり、”建築計画のお知らせ”と立札が立てられ、住民の配慮を後回しにして”初めに建設ありき”で事が進んだというのである。この事業者や行政の姿勢が、建設断念に繋がったことは想像に難くない。配慮のなさに怒りを爆発させ、当初は保育園建設に理解を示しながらも反対に回った人もいたと聞く。

今回の問題、主題が”保育園”にあることから、大いに注目されたが、根っこの部分は、公益性の高い事業であっても、周辺住民に対する配慮が必要、ということがあると考えている。公益性は優先されるべきと思いながらも、住民には財産権もあり、それを勝手に奪うことはできないだろう。中国のように、行政が有無を言わせず、建設を強行するようなことは日本であってはならない。

もちろん、保育園の建設は重要だ。だが、同時に住民の配慮を怠れば、進むものも進まなくなる。この地域は先述した通り、誤解を解いておきたいが、”子どもを大切にしている街”なのだ。話の持って行き方次第では、建設中止という事態にはならなかった──そう思えてならないのである。